___ss7lのブログ

欲張らず君とならどこへでも

心が豊かになる体験

 去年の六月頃、観劇をするために初めて品川の地を踏んだ。
目的は檜山の初主演舞台「BOSSCAT」で、以前SixTONES京本大我さんが主演を務めた演目の再演であると話題になった作品だ。
自担の初主演舞台の際に「初主演の特別性を盲信するオタク」がちょっと苦手になったわけだが、ボスキャの申し込みの時にはまだその舞台の初日を迎えていなかったので、私もその手のオタクのように命を燃やしてチケ発をした。

 3泊4日の遠征で、1・2日目は友人と観劇をし、3日目に美術館に行き、4日目に1人で千秋楽を見て帰るというスケジュールを立てた。

私的初日では見事良席をゲットすることが出来たのだが、普段画面越しに見ているアイドルが等身大かつ肉眼で見える距離で動いている衝撃が強すぎて「檜山のペディキュアぴかぴかだったな…」程度の残念な感想しかない
自分の目先の距離にいるオタクが「狩りの練習」というランダム指名a.k.a.檜山リアココーナーで檜山に絡まれており悔しすぎて「私も檜山のことが好きなのに」と号泣しながら帰宅した思い出はある 

2日目の時点でこの舞台のことがかなり好きであることに気づいた。大した観劇経験がなく専門的な視点から感想を述べることは出来ないのだが、ストーリーは勿論間の取り方も心地よく、時間配分を大体把握した2周目以降の公演でも飽きが来る瞬間がなかった。檜山演じる猫がオーガ様を食べるシーンなんかはゾッとする美しさがあり、「セクシーで文学的な大人に魅せる童話」というキャッチコピーを綺麗に体現していたように思う。連番した友人が京本担かつ2.5オタクで、私に比べてかなりの本数の舞台を見る人だったので酷評されたらどうしようという不安があったが良かったと言ってくれてとても安心した。
(友人は基本的に久保田定点をしていた。2日目にはたまたま京本が見学に来ていたので、無事私の非該当担を連れ回す罪悪感も消えた)

翌日は舞台への熱が冷めやらぬまま国立西洋美術館の「自然と人とのモノローグ」という特別展示を鑑賞するべく上野へ向かった。施設自体が大幅なリニューアルをしたということで何ヶ月も楽しみにしていた予定だった。
テーマの通り風景や花を題材にした作品をメインとする展示構成で、モネの「睡蓮」やオディロン・ルドンの「沼の花、悲しげな人間の顔」など私の地元では中々お目にかかる機会がないであろう有名作品も鑑賞することができた。

ただ今回私が1番感動したのはその点ではない。この特別展の特徴なのか、はたまた西洋美術館の特徴なのかはわからないのだが、絵画と絵画の間にところどころ「詩」が展示されていたのだ。白い壁にぴかぴか光る銀の箔押しがされており、様々な作家による自然を表す言葉はとても目を引いた。撮影ができる展示だったので「詩」を見つける度に一つ一つシャッターを押していたのだが、途中で写真のものに出会った↓(chu♡見にくくてごめん)

シャルル・ボードレールという名前はボスキャの中で登場するものだったので、思わず立ち止まって長い間見つめてしまった。物語の佳境、次男を姫に見初めてもらうために猫があれやこれやと手を焼いたりアドバイスをしたりするわけだが、その中に「姫は詩がお好きなので、ひとつ覚えておくといいでしょう」と言うような台詞がある。猫にボードレールの詩を叩き込まれた次男は後日姫の前でその詩を読み上げ(もちろんそれ以外の要素もあるが)見事結ばれることとなる。

この時に引用された詩は愛がテーマのもので、美術館に展示されているものとは別の作品なのだが、脳内でものとものが結びつくアハ体験にとても感動したのである。特にこの場合私は詩にも舞台にも疎いので、檜山光成というアイドルが私をそれらと引き合わせてくれて、文化的な経験値をくれたことになる。寝転がりながら画面の中の檜山を見つめて好きめろ〜♡かっこい〜♡とツイートしているだけでは叶わなかった貴重な経験が出来たなと嬉しく思った。

普段はつい最短の旅程を組んでしまう私だが、せっかく遠征するのであれば心に残る体験を沢山したいなと思わせてくれた遠征のお話でした

追記 貧乏すぎてボスキャのパンフも特別展の図録も買えなかったことを今でも後悔している。ちなみに千秋楽が40分伸びたせいで飛行機を逃し、しばらく檜山にブチ切れていた

おしまい